1.意見交換会の実施
国連の持続可能な開発目標(SDGs)は今や世界の共通言語となり、日本国内でも多くの企業でSDGsを経営に取り入れるなど、環境保護や社会貢献に関する意識が高まりをみせるなか、全国にある13の〈ろうきん〉では、従前より「人々が喜びをもって共生できる社会の実現に寄与する」と定めた「ろうきんの理念」を実現するため、地域の社会的課題解決に向けた取組みを進めております。
昨今、少子高齢化や地域力の低下という社会的な変化が進行し、社会的課題が複雑化・多様化しています。
今や単一の団体で解決することは難しい状況にあり、地域の企業・NPO・自治体など様々な団体による連携を通じて課題解決に取組むことが必要となっています。
そこでは、以前より長く地域の持続可能性に向けた課題に取組んでいるNPO法人等の経験や知識から学ぶことが大いにあると考えます。
2020年1月29日、東北ろうきんにおいて、宮城県を中心に活動するNPOや中間支援組織、行政の方々にお集まりいただき、東北地方における地域の社会的課題解決に向けて、各団体の活動の現状と問題意識等に係る意見交換会を開催いたしました。
〈参加団体一覧〉
・認定NPO法人 杜の伝言板ゆるる
・NPO法人 せんだい・みやぎNPOセンター
・NPO法人 エイブル・アート・ジャパン
・NPO法人 ポラリス
・仙台市文化観光局
・公益財団法人 仙台市市民文化事業団
・東北ろうきん
・全国労働金庫協会
(計11名)
意見交換会では、「文化がどのように地域社会に関わり、地域の課題解決を図っていくのか」をテーマに、東北ろうきんによる社会貢献事業の紹介や、東京・宮城を拠点とするエイブル・アート・ジャパン¹から、近畿ろうきんと一般財団法人たんぽぽの家が中心となって行うNPO、生協、行政等との連携を通じた障がい者による文化・芸術活動の取組み「エイブル・アート近畿 ひと・アート・まち」(※)、仙台市市民文化事業団から昨今の文化事業と地域課題の取組みおよび助成制度のトレンドを紹介いただき、地域の様々な団体による今後の連携の可能性等について意見交換を行いました。
参加者からは、
「他団体の取組みを知る機会は少なく、こういった会合は貴重である。」
「企業の社会貢献事業としてNPOとの連携が広がっている。」
「他セクターとの横のネットワークが広がることで課題解決に向けた取組みが深まる。」
「労金ならではの取組みとして、例えば障がい者への金融教育をNPOと連携して行ってはどうか。」
等、様々なご意見をいただきました。
今回、地域で活動している様々な方々との意見交換を契機として、新たな活動を考えるきっかけづくりや、今後の相互連携等の可能性を感じることができました。地域の社会的課題解決に向けて、引き続き、様々な団体との連携を図ってまいります。
【〈近畿ろうきん〉「エイブル・アート近畿 ひと・アート・まち」19年の軌跡】(リンク)
2.地域で活動するNPO法人ポラリス訪問
東北ろうきんでは、東日本大震災により甚大な被害を受けた地域で復旧・復興・被災者支援に従事するNPOやボランティア団体の活動支援を目的に、2012年度より助成を行っています。
今回、意見交換会に参加いただき、2019年度助成金交付先でもある「NPO法人ポラリス」に訪問してまいりました。
NPO法人ポラリス(以下、ポラリス)のある宮城県山元町は、2011年3月11日の東日本大震災によって、甚大な被害を受けました。その後、復興が進んでいくなかで、障がいのある方や心のケアが必要な方が山元町にもう一度戻れるようにと、また、地域の社会的課題解決のためにNPO活動は必要であることを理解していただくために、2015年にポラリスを設立しました。現在は、3つの事業「障害者支援事業」「心のケア事業」「地域コミュニティ創造事業」を行っています。
設立から2か月後には「山元が元気になるアートを」と、山下駅前に開店するスーパーの壁画制作の依頼があり、障がい者の芸術活動支援の実績を持つエイブル・アート・ジャパンからアドバイスを受けながら、1年かけて完成させました。
ポラリスは、障害者福祉の直接的・専門的な担い手として、文化を通じた働く人・地域の持続可能な社会を目指し、精神・知的・発達障がいの方の仕事や表現活動を支援しています。当施設の利用者は、名産のイチゴで地元の復興を支援するために設立した「農業生産法人株式会社GRA」のイチゴハウスの掃除・手伝いや、アートによる社会参加として、町内企業の看板や植木鉢にイラストを描くなど、町に彩りを添えています。
地域で何が起こっているのか、地域で活動するNPOは何を求められ、実践しているのか、まずは足を運んでみることが必要であることを改めて感じました。ポラリス代表理事の田口さんの言葉を借りると、『地域が持続可能な社会となるためには、「はたらく」という素晴らしさを広めることが必要である。』とのことでした。勤労者のための福祉金融機関として、これからも地域の様々な「はたらく」を応援してまいります。
¹1995年から「エイブル・アート・ムーブメント(可能性の芸術運動)」をたんぽぽの家と共同で提唱。各地で展覧会やシンポジウム、ワークショップを開催するなど、エイブル・アートの精神を全国の人たちと共有し、新たなネットワークを創っている。
【主に関連するSDGs】