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〈全国のろうきん〉~家庭も仕事も大事に~「次世代育成支援対策推進法」・「女性活躍推進法」にもとづいた男性の育児休職に関する取組みについて

投稿日: 2022年10月12日 11:22 作成者: ろうきん

カテゴリー:SDGs, 新潟ろうきん, 静岡ろうきん


はじめに


2015年9月、国連持続可能な開発サミットにおいて「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択されました。17のゴール(目標)、169のターゲットを2030年までに達成し、「誰一人取り残さない」社会の実現を目指しています。ろうきん業態においても、2019年3月に「ろうきんSDGs行動指針」を策定・公表し、2030年のSDGs達成を目指して「ろうきんSDGsアクション」に取り組んでおります。

「ジェンダー平等を実現しよう」(目標5)という項目では、「ジェンダーの平等を達成し、全ての女性及び少女の能力強化を行う」ことを目標としています。

ろうきん業態における取組みもご紹介しながら、ジェンダー平等について考えていきます。



日本におけるジェンダー平等の現状


目標5のターゲット4では『お金が支払われない、家庭内の子育て、介護や家事などは、お金が支払われる仕事と同じくらい大切な「仕事」であるということを、それを支える公共のサービスや制度、家庭内の役割分担などを通じて認めるようにする。』ことを目指しています。日本では今なお根強い、性別に基づいた固定概念や「性別分業意識」¹ の払拭が重要課題のひとつとされています。(一般社団法人 SDGs市民社会ネットワーク発行『そうだったのか。SDGs2020』から引用)

しかし、2022年7月に発行された「SDGs Index and Dashboards Report 2021」² によると、日本における「ジェンダー平等を実現しよう」(目標5)の達成度は下図(SDG5)の通りで、他の目標と比較しても低い達成度となっています。


(2022-sustainable-development-reportより)



同月には、世界経済フォーラム(World Economic Forum: WEF)が「ジェンダー・ギャップ指数2022」を公表しました。この指数は、各国における男女格差を測るもので、「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの観点から見たデータで作成されています。この調査における日本の順位は146か国中116位(2021年は156か国中120位)でした。先進国の中で下位に位置し、韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果となりました。

また、この調査では、日本における「女性管理職の割合の低さ」、「政治分野における女性の参加割合の低さ」等が指摘されています。



日本での取組みと課題


ジェンダー平等に関して、国連が1975年を「国際婦人年」とすることを宣言し、女性の地位向上を目指した取組みを提唱しました。日本においても1977年に「国内行動計画」が策定され、1985年に男女雇用機会均等法、1992年に育児休業法が制定されました。1999年には、男女が互いにその人権を尊重しつつ、能力を十分に発揮できる社会の実現のために男女共同参画社会基本法が施行され、男女が共に家庭生活と社会生活を両立できることを目指しています。

「男女共同参画白書_令和4年版」の「『夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである』という考え方に関する意識の変化」の項目では、調査が始まった1979年以降この考え方に賛成する方が半数以上を占めていましたが、2016年調査から反対が賛成を上回っており、その後反対の割合が上昇しています。



2022年には「育児・介護休業法」が改正され、女性だけでなく、男性も育児休職を積極的に取得することが求められるようになりました。また、2022年6月29日には、小池百合子都知事が「育休」を「育業」という愛称に変更することを発表しました。都知事は、「育児休業はある意味、職場より大変です。『業』には仕事という意味のほかに、努力して成し遂げることという意味があります。業務にはチームワークが重要であるように、育児にも夫婦や職場の理解が必要です。大事な仕事である育児に取り組む、誰もがそう思えるマインドチェンジを進めたいと思っています。」とコメントしています。



男性の育休取得促進の取組みは以前から行われており、厚生労働省が2010年に男性の子育て参加や育休の促進等を目的として始動した「イクメンプロジェクト」もそのひとつです。

しかし、令和2年度雇用均等基本調査によれば、男性の育休取得率は12.65%に留まっています。また、「名ばかり育休」との批判がある取得期間が5日未満の割合も依然として28.33%を占めています。

日本における男性の育休取得を促す関連法が施行され機運も高まっていますが、取得率向上を阻む要素として、休むことへの心理的なハードルの高さや、性別分業意識の残存など課題も多く、各企業において創意工夫しながら取組みを進める必要があります。



ろうきん業態の取組みと課題


「ジェンダー平等を実現しよう」(目標5)を達成するために、政府だけでなく企業においても、育休制度の充実や意識改革、企業内での取組みを充実させる必要があります。

全国のろうきんでは、すべての職員が仕事と家庭の両立を図りながら、十分に能力を発揮し活躍できる環境整備を行うため、育児・介護休業法改正や社会動向を踏まえ「次世代育成支援対策推進法」(以下、次世代法という)および「女性活躍推進法」(以下、女活法という)にもとづく一体型の行動計画を策定し、取組みを進めております。

上記取組みの一環として実施した全国のろうきんに対するアンケート結果では、男性の育休取得率向上が課題であるとの意見が複数の金庫からあり、それを受け、「男性の育休取得」をろうきんの重点課題と位置づけ取組みを強化しています。

今回は、全国のろうきんの中で先進的な取組みを行っている金庫の事例を紹介し、課題や改善点についても共有することで、より良い業態の取組みにつなげてまいります。



静岡ろうきんの事例


静岡県では、「子育ては尊い仕事」の理念のもと、子どもと子育てを大切にする社会の実現を目指し、「子育てに優しい職場環境づくり」を推進しています。その取組みのひとつとして、仕事と家庭生活が無理なく両立可能な子育てしやすい職場環境づくりを進め、ワーク・ライフ・バランスに配慮した職場のあり方を実践している企業等を「ふじのくに子育てに優しい企業」として表彰をしています。

2021年度は、子育てに優しい制度の有無やその利用実績、企業の独自の子育て支援に向けた取組み、イクボス³の取組み等の観点から表彰選考委員会により総合的に選考が行われ、静岡ろうきんを含む9社が静岡県から表彰されました。


また、静岡県が発行した「子育てに優しい企業取組事例集『hugrepo』」では、静岡ろうきんの取組みとして①「配偶者出産休暇」制度、②復職前後の職員を集めた意見交換会の開催が取り上げられます。


静岡ろうきん古川理事長(当時)は、『制度の構築と、職員同士がお互いを思いやり、制度を利用しやすい職場風土とすることが何より大切です。「家庭も職場も大切」そして「誰一人取り残さない」職場を目指し、ディーセントワークの実現に向けて歩みを進めてまいります。』とコメントしています。

https://all.rokin.or.jp/blog/img/hyosyo_shizuoka.jpg

【2022年1月17日に行われた表彰式の様子(左から静岡県知事・川勝様、静岡ろうきん・古川理事長(当時))】



新潟ろうきんの事例



新潟ろうきんは、2020年度に男性の育休取得率100%を達成しました。ろうきん協会にて、達成した要因について新潟ろうきんにヒアリングしたところ、①労使での計画策定、②出産育児支援プログラム、③イクメン応援宣言、④庫内報等広報ツールを活用した啓発活動の4点が取組みを達成した要因として挙げられました。


①労使の計画策定

労使での計画策定では、新潟ろうきん(事業体)による取組みだけでなく、労働組合の第1次男女平等参画推進計画による取組みが効果的に機能したことが、男性の育休取得が進んだ大きな要因となりました。

②出産育児支援プログラム

新潟ろうきんでは、復職時の環境整備、マタハラの防止などを定めた出産育児支援プログラムを制定しました。職員からの妊娠報告がルール化され、妊娠判明時から職場復帰まで「面談シート」による4回のヒアリング機会が設定されたことにより、職員と部店長間で意思疎通が図られ、遠慮や躊躇なく育休を表明できる雰囲気が醸成されました。

③イクメン応援宣言

新潟県は、男性労働者が育児に参加しやすい職場環境づくりに積極的に取り組む企業に「イクメン応援宣言」を奨励しています。

新潟ろうきんは、イクメン応援の取組みを宣言し、「男性職員の育児休業取得(連続14日以上)を奨励する」(当初⁴)と明確に指標を示しました。これにより、男性の育休取得に対する遠慮や躊躇を抑制する効果や「複数業務を可能とする職員教育を実施する」を掲げ、職員が互いにフォローしあい、業務を円滑に引き継げる体制が構築され、男性の育休取得率向上に寄与しています。

④庫内報等ツールを活用した啓発活動

庫内報には、育休取得者と役員の座談会などが掲載されており、育休取得を検討している職員の後押しを促しているほか、育休取得の際にフォローする側の職員の理解醸成になる等の相乗効果を生んでいます。

また、「出産育児ハンドブック」(新潟ろうきん 2021年2月作成)には、「妊娠・出産・育児」の各タイミングで利用できる諸制度や業務上の配慮措置等、休職時の社会保障制度など一連の情報が丁寧に解説されおり、不安なく育休取得を検討できる環境整備がされています。

これらの様々な取組みが実を結び、2020年度に育休取得率100%を達成することができました。



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【庫内報「ふれあい」にて掲載されたイクメン特集記事】



さらなる課題



先の2つの事例としてご紹介した金庫からは、課題として次のことが挙げられています。

静岡ろうきんでは、配偶者出産休暇や私傷病等積立休暇の育児目的利用の休暇制度があり、それらの取得意識は高まっている一方で、育休の取得については、なお改善の余地があると自己評価しています。引き続き、「男性職員も育休を取得しながら積極的に家事・育児を担う」意識が醸成できるよう職場環境や職場風土づくりに向け取組みを進めています。

新潟ろうきんでは、育休を6日間取得(最短)した職員もいれば、2か月半取得(最長)した職員もおり、育休取得期間に個人差があることや、同時期に同店舗で複数の職員が育休を取得した場合に業務に支障がでることが課題としており、育休取得に向けた環境整備や複数業務対応のための職員教育を進めています。



終わりに



男性の育休取得率が93.9 %と全国平均の約13%を遥かに上回る企業においても、育休取得日数の平均が3.1日間に留まっているとの記事⁵が掲載されていました。取得率は高いが、休む期間は数日という傾向は大手金融機関でも目立ち、「土日も併せて3日間」という例もあるそうです。男性が真の意味で育児に参画するためには、周りのサポートや上司が育休取得を促すことも重要になります。制度だけでなく、育休が取得しやすい環境づくりにより、男女ともに働きやすい職場を目指すことが、SDGsの取組みにつながり、ジェンダー平等の達成にもつながるのではないでしょうか。




¹「性別分業意識」とは、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え

²ドイツ最大財団のベルテルスマン財団と持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)による各国のSDGs達成状況を分析したレポート

³職場で共に働く部下・スタッフのワーク・ライフ・バラス(仕事と生活の両立)を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織業績も結果も出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)のことを指します(静岡県公式HP「ふじのくに」より)

⁴2022年度からイクメン応援宣言を「男性職員の育児休業取得(通算28日以上)を奨励する」としています

⁵2022年3月29日朝日新聞「けいざい+男性育休の現場から1」より




【主に関連するSDGs】



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